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静岡地方裁判所沼津支部 昭和50年(ワ)338号 判決

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告は原告に対し別紙目録記載の土地につき静岡地方法務局富士宮出張所昭和四九年一二月二三日受付第二三七四七号をもつてなした昭和四九年一二月二日譲渡担保契約を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、

一、原告は有限会社有賀商店(以下商店という)との間に(イ)昭和四九年六月二二日商店が後に富士宮信用金庫西町支店(以下金庫という)から四〇〇万円を借りうけるについて、原告が商店の右借受債務を保証すると共にこれを金庫に代位弁済したときは、その額にそれを元金として代位弁済の日から完済に至るまで年一四・六%の割合による損害金を附加して支払うことなどを約旨とする信用保証委託契約、(ロ)昭和四九年七月二日商店が後に金庫から三〇〇万円借り受けるについて、前同様の約旨の信用保証委託契約をそれぞれ締結し、商店は右(イ)の契約に基き昭和四九年七月二日金庫から四〇〇万円、(ロ)の契約に基き昭和四九年七月二日金庫から三〇〇万円をそれぞれ所定の約旨で借受けたが、その後、前者については元金内金一二五万四、二八〇円と利息、後者については元金内金九〇万円と利息をそれぞれ支払つただけでその余の所定の支払をしないので、原告は前記約旨に基き昭和五〇年五月二八日金庫に対し前者の残元金二七四万五、七二〇円、後者の残元金二一〇万円以上合計金四八四万五、七二〇円を代位弁済し、同日その旨を商店に通知して、商店に対し右債権を取得した。

二、商店はその代表者有賀和夫の母秀子の弟である被告から二、八〇〇万円の借受け金債務を負担していたところ、昭和四九年一二月二日他の債権者を害する目的で別紙目録記載の土地(以下本件土地という)を含むその所有全不動産(時価七、四二六万円相当)と機械器具一式(時価二、六〇〇万円相当)をその譲渡担保として被告に譲渡契約を締結し、これに基き本件土地について被告のために静岡地方法務局富士宮出張所昭和四九年一二月二三日受付第二三七四七号をもつて右契約を原因とする所有権移転登記手続を経由したが、被告は他の債権者を害することを知りながら商店と右譲渡担保契約を締結して右登記を経由したものである。

三、よつて、原告は商店および被告間の右譲渡担保契約を詐害行為として取消し、被告に対し右所有権移転登記の抹消登記手続を求める。

四、仮に右理由がないものとしても、商店は右のように二、八〇〇万円の債務について合計一億二六万円の物件を譲渡担保として被告に譲渡しているので、それはいわゆる精算型の譲渡担保であり、そうすると、被告はその差額七、二二六万円を商店に返還すべきであるから、原告は商店に代位してその範囲内の価格である本件土地の返還を求めることとして、被告に対しその所有権移転登記の抹消登記手続を求める。

と述べた。(立証省略)

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として

一、原告主張の一、の事実は不知、二、の事実のうち、商店がその代表者有賀和夫の母秀子の弟である被告から二、八〇〇万円の借受け金債務を負担していること、商店が原告主張のように本件土地を含む物件を被告に譲渡担保として譲渡し、所有権移転登記手続を経由したことは認めるが、その余の事実は争う。同四、の事実は争う。

二、本件土地の時価は一、〇〇〇万円であつたのみならず、被告は他の債権者を害する意思が全くなかつたから、詐害行為が成立する余地はない。又譲渡担保による精算義務は未だ被告に発生していないから、原告の本訴請求は失当である。

と述べた。(立証省略)

(別紙)

目録

一、富士宮市宮原字中本村二四二番一

雑種地 九二二平方米

二、同所同番三

原野 五・〇四平方米

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